中目黒の住宅街、約60平米の敷地に建つ木造3階建ての小住宅である。施主は完成後しばらくの間は賃貸に出すことを前提と
していたため、借り手の付きやすい「一般解」も少し意識しながら、いかに良質な住宅を作り出すかというところが要点であ
った。1階は外のアプローチのタイル床が玄関の中まで繋がり、その奥にオープンな洗面所と白い箱の中には浴室が添えられ
ている。ここには直行する2組の障子とそれらを納める戸袋を設けて、玄関のみ・洗面所のみ・全て一体という3パタンの仕
切り方を用意した。玄関や洗面所は通常、空間の稼働率が低いのでこのように重ね合わせることで、構造的な条件の厳しい木
3住宅の1階部分においてもフレキシブルでゆったりとしたエントランス空間を実現している。2階においては、中央に軽や
かな鉄骨らせん階段を挿入してダイニングスペースとリビングスペースを柔らかく分節しながら、階段スペースをLDK空間
に取り込んでいる。3階は軽やかなブリッジを渡った両側に個室があり、中央の吹抜に面した上げ下げの障子によってまた、
LDK空間と可変的に連続している。これらのように、空間の重ね合わせや建具による可変性がこの小住宅の骨格となって、
さまざまな部分におけるちょっとした違いや工夫を生みだしている。また、カフェオレ色の外壁は白と茶の2色吹きによるも
ので、一見すると平凡ながら、近づいてよく見てみるとそれぞれの粒子が混じり合い、複雑で奥行感のある表情を醸し出して
いる。まさにこの住宅のデザイン意図を体現するかのようなイメージから、コーヒー豆のように小粒でも上品で味わい深い住
宅になるようにという意味をこめて「MAMETALO」と名付けた。(※「TALO」はフィンランド語で「家」の意味)
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